2009年3月7日土曜日
淑女、イケイケ、パバロッティ
金曜の夜。個人的な祝い事にかこつけて友を誘い早稲田のスペインバル、ノストスへ。何かあったときに開けようと思って寝かせてあったケルチェッキオ ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ1998と、仕事の延長で試飲用のシャトー・デュ・クレレ ミュスカデ2007を持参。対して、店主が「on the house」で用意してくれたのがクアトロ・パソス2006。これはスペイン北西部、ビエルソという土地の産で、最近話題のメンシアという品種によるもの。飲んでみたいワインだったのだ。飲み手は僕を入れて4人。店主夫妻もときどき参戦。まずはカンポ・デ・ボルハ(リオハの南)のミローネ3兄弟から。「3兄弟」はテントウムシの絵が可愛らしいラベルが白、ロゼ、赤と揃ったところからわれわれが勝手に命名。税込700円台という価格からすると優れている。とくにロゼは2000円といわれても納得するだろう。ムール貝が出てきたのに合わせてミュスカデへ。バランスよく風格のあるワインで淑女を連想させる。勢いづいてクアトロ・パソスを抜栓。黒地に光沢のあるピンクでクマの足跡が描かれたラベル(クアトロ・パソスは4つの足跡の意味)から感じられるイメージ通りの溌剌とした香り。果実もスパイスもいきいきとして飲み手のテンションを上げてくれる。淑女から一転、こちらは相当遊んでいる女という感じ。モツをトリッパ風に煮込んだ料理が出てきたところで、満を持して、デキャンタージュしてあったブルネロを注ぐ。スペインバルにイタリアの銘酒とは掟破りだが、祝いの席に免じて今夜は許してもらおう。97年、世紀のグレート・ヴィンテージといわれた年の収穫期に取材で現地にいるという幸運に恵まれ出合って以来、ブルネロは僕の心のワインである。いつ飲んでも、若くても熟成したものでも、一度も裏切られたことがない。ミラノに住む友人のMが一時帰国するたびに必ずブルネロを持ち帰ってくれるのだが、今宵開けたのもその1本である。Mの奉仕に応える術を僕は知らない。ただ感謝するのみである。クマの足跡でテンションを上げた一同だったが、一転、ブルネロのパバロッティの独唱のような壮麗な趣に言葉を無くしてただ唸る——。序破急、いや、起承転結? どう表現するにしろ、誰が演出したわけでもないのに、構成力のあるエンタテイニングな飲み会であった。
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