2009年3月5日木曜日

仮面ライダーといたずらっ子

ポルトギーザー、ドルンフェルダー、フリューブルグンダー……『仮面ライダー』に出てくる改造人間の名前ではない。今夜飲んだラオスブープというドイツワイン(赤)に使われている品種名だ。調べてみるとポルトギーザーはポルトガルから伝来したと信じられている品種。ドルンフェルダーは1955年に交配によって生まれた新品種でカベルネ・ソーヴィニヨンの対抗馬になると目されているもの。フリューブルグンダーはピノノワールの突然変異によって生まれた品種。冷涼で本来はぶどう栽培の適地とはいえないドイツでは、古くから品種の実験や開発が盛んだった。リースリングを基軸に“フレッシュ&フルーティ”で一時代を創ったものの、その栄光も長くは続かず、いまは特色ある赤を生み出そうと各地で奮闘しているとどこかで読んだ。ラオスブープとは「いたずらっ子」のこと。香りは濡れ落ち葉を含んでボルドーを思わせ、口に含むと熟したブルゴーニュのような趣があるこのワイン、まさにその名の通りのイメージである。いや、数々の奇譚・名作を生んだこの国のこと、いたずらっ子にも僕の知らない深いいわれがあるのかもしれない。

もう1本抜栓したのはリバー・ルートのカベルネ・ソーヴィニヨン2006。アメリカワインのような名だが、じつはルーマニア・ワイン。ルーマニアとは「ローマ人の土地」の意味なのだし、東隣のモルドヴァは最古のワイン産地のひとつ、となればルーマニアにも当然古くからワインがあったのだろうが、目にするのも口にするのも初めてである。1000円台前半の値段からしても高級感や洗練は期待していなかったが、濁って酸っぱくて野暮ったくて古風で、それがかえって面白い。ラベルにそうだと記されていなければ誰もこれがカベルネだとは思わないだろう。ワインの近代化、グローバル化を象徴する品種で造られた懐旧のワインといった感じ。思えば2年ほど前に飲んでいまも強く記憶に残っているモルドヴァのワインも、これに通じるものがあった気がする。ほんの何年か前まで、世界のワインの大半はこういう味だったのではないかと想像させる味。

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