2009年6月4日木曜日

スペイン報告


5/23〜6/1まで、スペインのムルシア地方(ブーリャス、フミーリャ、イエクラ)とお隣のラマンチャ地方に属するイゲルエラ村へワイン取材に行ってきた。写真はフミーリャで撮ったもの。アメリカ西部かと見まがうような乾ききった風景のなか、ムルシア地方の主要品種モナストレルの畑が広がる。降水量が極端に少なく地中に水分が乏しいので、ぶどうは間隔を充分に開けた株仕立てで植えられていることが多い(無灌漑の場合)。一方、灌漑をして垣根仕立てにされているのはモナストレル以外のシラーやカベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネといった国際品種。このあたりの土壌は石灰岩質。場所によって表土は小石、砂、粘度混じりに大別される。モナストレルはフランスではムールヴェードル。この品種についてヒュー・ジョンソンの『地図で見る世界のワイン』から引用してみよう。
〈成熟させるには充分な日照が必要。酸化しやすいがプロヴァンスの最も高貴なワインとなる。南フランスでは全域で、特にグルナッシュやシラーとのブレンドものの肉付きを良くする。スペインではモナストレルと呼ばれ、赤ワイン用の葡萄として2番目に多く栽培されているが、質よりも量を連想させる。カリフォルニアやオーストリアではマタロとして知られ、やや軽んじられていたが、ムールヴェドルと改名し、魅力的なフランスのイメージをもたせて成功した〉
この説明文の語り口で明らかなように、モナストレルは長く二級の評価に甘んじてきた。色が濃く、甘みと酸がしっかりしているので、他の品種を主体としたワインの欠点を補う脇役として売られていたのだ。1980年代に一部の向上心ある生産者が奮起し、ボトル詰めのワインを造って国際的な評価を得るようになるまで、このあたりのワインはほとんどがバルク売りだった。