2009年10月6日火曜日

急いてはワイン評価をし損じる

南ローヌのヴァントゥー山には大昔からグラン・ゾム(大男)伝説が伝えられるという。その伝説の名を戴いたドメーヌ・デュ・グラン・ジャケ レ・グラン・ゾム2008を昨日開けた。ワインショップでは「パワフルなフルボディ」が売り文句になっていたが、抜栓直後の印象はどちらかというと線が細く、やわな美少年という感じだった。強いて特徴的だと思ったのは静かに漂う花の香り。4分の1くらいを飲んで栓を閉じてから丸1日。時間が大男を目覚めさせた。グラスに鼻を近づけるとのけぞるような強い芳香なのだ。それはまごうかたなきバラの花。バラは品種によって匂いの強弱に差があるそうだが、イメージで言うなら、深紅の、大輪のバラの花。造り手のジョエル・ジャケはビオディナミを取り入れたビオロジーを実践している人。自然派ワインゆえの後伸びか。ワインに必要な時間に比べ、ときに人は結果を急ぎすぎるものだ。そんな殊勝な気分にしてくれるこのワイン、1880円(税込)である。

2009年10月4日日曜日

名月に一句



往く月を
見送りながら
ロドリゲス

4度目のボルドー取材から帰国して1週間。いまだ時差ぼけが抜けない。年齢による肉体の衰えについては語りたくないが、ここ数年時差ぼけから立ち直るのに日数がかかる。昨夜は零時に床に就き3時33分に目が覚めた。世の中には3時間睡眠で通す人だっているそうだが、生来ロングスリーパーである僕には到底無理。次なる睡魔を誘うべくキッチンの椅子に座って、昨夜開けたテルモ・ロドリゲスの白の続きを飲む。抜栓時よりもワインが落ち着いて邪気やてらいのない円い味がする。おりから今宵は中秋の名月。ワインに手を出す前には皓々として西の空にあった月だったが、ワインを手にじっくり眺めようと再びベランダに出たときにはすでに雲の向こうに隠れていた。月もワインもこちらの都合通りにはゆかぬ。それも魅力のうちなのかもしれない。