2009年5月15日金曜日
日常を非日常に変えてくれるもの
友人Yの誘いで日比谷で芝居『この森で、天使はバスを降りた』を観てから、かねて行こう行こうと思って行けていなかった銀座7丁目のワインバー、ラ・ニュイ・ブランシュへ。店主のH氏と初めて会ったのは彼が西麻布の店にいた5、6年前のことだ。当時西麻布のその店には5度ばかり通ったが、その途中でH氏は新天地を求めて店を離れたのだったと記憶している。住所をたよりに探した店は銀座らしい雑居ビルの地下にあった。恐る恐るドアを開けて店に入ると、たまたまカウンターのなかは無人。しばらくして、見知らぬ顔のスタッフが一人。やや遅れて見覚えのある顔が裏から出てきた。少しばかり年を重ねたようだが思ったほどは変わっていない。「Hさん」と声を掛けると、「あ、ウキタさん」と即答が返ってきた。5、6年の歳月が一瞬に縮まったような気になる。メニューを見るまでもなく、棚に並んだグラスの構成から、この店がどこのワインに重きを置いているかが知れた。シャンパーニュ、ブルゴーニュの白、赤は北ローヌ、南ローヌと僕は4杯。隣のYは赤でイタリアへ。この不景気に店は賑わっていた。背後のテーブル席から「ワインてさ、結局値段でしょ」と聞き捨てならぬ発言が聞こえてきてムッとしたりするが、ここは銀座、そういう人もいるのだと自分を納得させる。そんなことよりも、ワインを通じて知り合った人が時間を超えて達者でやっていることが嬉しい。『この森で、天使はバスを降りた』のテーマはパンフレット的には「いつだって人生はやり直せる」だが、僕の見立てで言うと、「ちょっとしたきっかけさえあれば、平凡な日常もパラダイス(=非日常)になる」だ。僕とH氏は互いに別々の日常的5、6年を過ごして、再び出合った。日常を非日常に変えてくれたもの、それがワイン。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿