2009年3月30日月曜日

抹茶は敵か味方か

3月26日、Kヴィントナーズのハウス・ワイン(白)を抜栓。シャルドネ85%、リースリング10%、ミュスカ5%。パワフルで快活、だが粗削りではない。そのあたりがワシントン州の魅力か。樽のかかっていないシャブリにこれに近いものがあった。ブラインドでこれを飲まされてアメリカワインだと即答できるだろうか? 境界ワインかボーダーレスワインか、興味のつきない産地である。

3月27日、夜、ピエール・ガニエール・ア・トウキョウでボルドーワイン委員会主催のボルドー甘口白ワイン・ディナー。ソーテルヌに代表されるボルドーの甘口白ワインを今年は重点的にPRしたいという委員会の意思表明をメディアに対して行うのがこの会の趣旨である。アペリティフからデザートまで10種類の甘口白ワインで通すというもの。久しぶりに口にする貴腐ワインは高雅な気分にしてくれた。料理も想像以上によくできていてマリアージュも無理なく楽しめた。ただ、スピーチに立ったゲストが茶道の話(菓子の代わりに甘口ワインを一口飲んでから抹茶を飲むという試み)をし、実際に8杯目のソーテルヌとともに冷たい抹茶が出てきたのだが、この遊びにはあまり感心しなかった。というのも、一昨日バリューボルドー試飲会に出かける前に、わが精神に気合いを入れるべく家で抹茶を飲んでから出かけたが、抹茶特有の甘みとフレーバーが口腔鼻腔に残って肝心のワインの甘みが感じられなかったという苦い経験をしたばかりだったのだ。抹茶を飲むなら、すべてのワインを飲み終えた後に飲むべきというのが僕の意見だ。
会の後、H誌T氏とお茶をしながら近況を語り合った。面白い新男性誌の企画が実現しそうだと話すT氏。縁も思い入れもある雑誌が次々になくなっていく昨今、ぜひともホネのある媒体をつくって存続してもらいたいと切に願うばかり。

3月28日、午後西麻布のプロヴィナージュで行われたオーストリア・ワインの勉強会に参加。茨城からワイン仲間のIクンも上京。この会の主催者で講師を務めるソムリエTさんは去年オーストリア・ワイン大使に任命された人。冷涼地のワインに対するこだわり、愛着には特筆すべきものがある。冷涼地のぶどうはフェノール化合物が成熟してから収穫されるので風味が豊かになるというキモの説明に始まり、オーストリア・ワインの歴史、産地、土壌、品種、法制にざっと触れた後で白・赤を試飲。繊細でおだやかなワインを飲みながら、シュタイナーが生まれた国でのビオディナミ、品種特性よりも土地を表現するために伝統的に行われてきた混植、混醸(ゲミシュターサッツ)、ドナウ河沿いに広がるワイン文化圏のことなど、つぎつぎに切り口が頭に浮かぶ。

2009年3月25日水曜日

ボルドー100本、鼠は何匹?

リッツ・カールトンでバリューボルドー2009の試飲会。僕のワイン飲みとしての足腰を鍛えてくれたのはバリューボルドーだったと言ってよい。その点ではひとかたならぬ恩義を感じているのだ。100本のほとんどすべてを試飲(途中からはほとんど意地で)。玉石混淆なれど何本かは「オッ!」と神経が反応するものもあった。とはいえ、去年と比べると総じて低調な気がしたのは、こちらのコンディションのせいか。会場でたまたま会った同業の友人Kクンが「今年の赤はあっさりというか浅いと感じました」との感想をメールでよこしたが、たしかにそういう印象はあって、それが僕にはメルロ主体のものが目立ったせいもあると思えた。メルロ主体のワインが「あっさり」とか「浅い」とは言えないが、ボルドーのワインを100本並べるのならもう少し左岸タイプというかカベルネ主体のタフなものが多くあってもいいと思うのだ。3500円以下という価格設定の縛りのせいもあるのだろう、あるいは昨今の世間の嗜好と選者の傾向がメルロ的な方向へとなびいているのか、とにかく飲んでも飲んでもメルロであった。
100本のコーナーとは別にボルドーを扱う業者のブースが出ており、余勢を駆っていくつか試飲したが、むしろそちらの方にグッとくるものが連発した事実にバリューボルドーという企画の実力というか内情というかが見えた——なんて言ったら問題発言だろうな。

ミッドタウン内のディーン・アンド・デルーカでワシントン州の白を、プレッセでスペインの白赤各1本をそれぞれ購入。

帰宅後しばらくはワインを飲む気にならなかったが、夜更けにはまたその気が戻ってカプサネス マス・コレット2005を抜栓。先日のスペインワイン・プレスミーティングで帰りに手土産としてもらったもの。ガルナッチャ、サンソー、テンプラニーニョ、カベルネの混醸。なにやら意欲作らしいが、初日の印象は「荒々しい」の一言。というか、もしや劣化している? ネットで調べてみたらカプサネスはプリオラートの近くの村(DOはモンサン)。このボデガは80年代までへこんでいたのが90年半ば以降につくりを改め評価を得たらしい。やはり、どうもプリオラートに呼ばれている気がしてならない。

2009年3月24日火曜日

野球とワインの共通点について

今日の午後にサムライジャパンの2連覇で幕を閉じたWBCにすっかり付き合ってしまい、ここ数日は仕事も手に付かぬありさまだった。昨夜はアメリカに勝った準決勝の報道を見ながらドメーヌ・デュ・ビシュロン マコン・ペロンヌV.V.2006を開け、また前日抜栓したアナケナ シングルヴィンヤード カルメネール2006の続きを飲んだ。ビシュロンは青山の和食屋で出会って以来気に入って何本か飲んだ。夕食につくった鯛の煮物に合うと思って久しぶりに買ったのだが、以前とちょっと印象が違った。ヴィンテージが違うのか、自然派ならではの「ブレ」か? 一方、アナケナは昨日よりもまとまりが出て味わいが上がったように感じた。そんなチリワインの充実ぶりにそそのかされて考えたわけでもないが、今回のWBCで起こっていることはワインの事情と相通じるところがあると思う。アメリカで生まれた(キューバが発祥という珍説もある)野球がアジアでスモールベースボールという技術と出会って花開き、ついには本家を圧倒するまでになった。アメリカやキューバをフランスやイタリアに置き換えると、ワインのたどった経緯と似てはいないだろうか。野球における日本や韓国はさしずめワインにおけるチリやニュージーランド、そして日本である。感動や驚きを与えてくれるワインなら、どこの産でも品種が何でもかまいはしない。最近強く感じていることを野球を通じて再認識したかたちだ。
きょうの決勝戦、4時間に及ぶ試合の半ば、どこまでも互角に戦う日韓選手のプレーぶりを見て、もうどっちが勝ってもいいじゃないかという境地に至った。野球もワインも、抜きん出たものに国籍も愛国心も何も関係ないのだ。

2009年3月22日日曜日

ワインの道はワインが導く

3/19の話から。スペイン大使館経済商務部が開いたスペインワインのプレスミーティングに出席。骨子は昨年度もスペインワインの日本での売れゆきは好調で、売り上げは8年連続前年比増、ついにアメリカを抜いて輸入ワインの第4位(1位フランス、2位イタリア、3位チリ)になったとのこと。年間PR計画の説明を上の空で聞きながら会場を見回すと、C誌編集者のOさんが。かたちばかりのミーティングが終わって懇親会という名の立食&試飲に移ったところでOさんに声をかける。彼女とはワインの話でいつも盛り上がるのだ。赤、白、泡、シェリー、合わせて24本が試飲用に供された。石ころのエチケットで印象深いフィンカ・バルピエドラや最近僕が高評しているエルカヴィオ・ロブレの上のクラス(リミテッド・レセルヴ)、さらにはデスセンディエンテス・デ・ホセ・パラシオス・ペタロスもあった。これは3カ月ほど前に紀ノ国屋のワインコーナーでジャケ買いして印象に残っていたもの。あらためて調べ直してみると、品種はメンシア100(!)。造り手のアルバーロ・パラシオスはペトリュスのムエック社で修業を積んだのちプリオラートの名を世界に広めた人物。なるほど。スペインワインの革新を語るにはプリオラートは避けては通れないのはわかっていたが、とりつく島がなくて困っていたのだ。これで道筋は照らされた。ワインの道はワインが導いてくれる。Oさんとは近くシェリー会をやることを約して別れた。

3/20夕食の買い出しでいった東急プレッセでヴィスカラ センダ・デロロ2006を購入。これも新たなるジャケ買い。昨夜開けて飲んだら、これがまたオドロキの完成度。ネットで検索をかけてみたがまだインポーターのサイトに紹介文が載っているのみ。新顔であるらしい。高地畑での栽培によるものか、スペインものにしては出色のエレガンス。翌朝(つまり今朝)は野球の試合があって深酒は禁物だったのに、つい止まらなくなってあやうく飲み干すところだった。センダ・デロロとは「黄金の小道」。またもや“道”である。スペインワインの千里の道へ、こうして一歩ずつ踏み込んでいく。

2009年3月14日土曜日

「あの丘」への思いはつのる

M・シャプティエ社のワインセミナーに出席。社長のミッシェル・シャプティエ氏自身がマイクを握って自身のワイン哲学、テロワールの定義、ビオディナミを実践する意義を語る。フランス人らしい自信に溢れた饒舌。脚が悪いようだったが、元々の障害か事故か気になった。印象に残った言葉から。
「ぶどう栽培家がハシゴの高さを決める。それに昇るかどうかは醸造家次第である」
「スノッビズムに溺れてはならないと自戒している」
「シラーは、最近の研究により、エルミタージュの丘の近くで交配によって生まれた品種だということが証明された」
「ワインの後味と料理がマリアージュする」
「醸しを長くしすぎると成分抽出はかえって減る」
セミナー後半は、M・シャプティエ社が誇るセレクション・パーセレール(特に厳選された単一畑ものですべて単一品種による)の2005年水平試飲。白3本(マルサンヌ)、赤5本(グルナッシュ1本、あとはシラー)の計8本のうちじつに4本がパーカーポイント100点満点。ミッシェル・シャプティエ氏は世界で最も多くのPP100点を獲った男だそうだ。
最初の白、サン・ジョセフ・ブラン“レ・グラニ”が会場の端から注がれ始めるとすぐに優美な香りが鼻をくすぐった。酸味が少なく、奥ゆかしく、時と共に複雑さを増す。フィニッシュに感じる軽い苦みがまたいい。エルミタージュの白は長熟に堪えるというが、熟成したあとはどういう味になるのだろう? 初めて北ローヌのヴィオニエを飲んだ日の記憶が甦った。記憶は嗅覚とつながっているというのは真実である。どうやら僕の好む白ワインのスタイルはローヌ川が削った渓谷沿いにあるらしい。赤ではトリを飾ったエルミタージュ・ルージュ“レルミット”が抜群、いかにも若々しいが、仕立ての良いタキシードのような気品が感じられた。
試飲したワインは9000円〜37000円。なかなか普段の生活では手が届かないが、このクラスのワインをたまに飲んでおくことは自分のなかに基準をつくるためにとても大事なことだ。
3年前、ローヌを訪ねたときは南部だけで、北部に気が残った。まだ見ぬエルミタージュの丘への思いはいよいよつのるばかり。

2009年3月12日木曜日

花より先に開くロゼ

バロン・フィリップ・ド・ロスシルト社のPRをしているH社から試飲用に送ってもらったル・ロゼ・ドゥ・ムートン・カデ2007を抜栓。この3月に発売になったばかりの新商品だ。華やかで品のある紅色。開けたての香りはフルーツというよりアスパラなどのヴェジタブルを感じる。口に含むと舌先にふっと甘みが触れる。このほのかな甘みがすごくいい。ザクロのような、ルビー・グレープフルーツのような。ムートン・カデ(赤)には残念ながらいままであまり良い印象がなかったが、今回のロゼはすばらしい。なぜバロン・フィリップがいまどきボルドー・ロゼを?という疑問は実物の出来の前に雲散霧消してしまった。部屋に春が満ちるようだ。桜の花の下で飲んだらさぞや旨かろう、タヴェルのロゼと飲み比べてみたらどうだろう、と楽しい想像がふくらむ。録画してあったドラマ『神の雫』の最終回を観ながら続きを飲む。遠峰一青の真似をして「おぉぉぉぉー!」と唸りながら、またグラスの中身を飲み干す。ドラマは視聴率が悪く放映打ち切りの憂き目を見たそうだ。気の毒だが、あのつくりでは無理もない。ワイン好きにかぎって『神の雫』やパーカー・ポイントのことを悪く言うが、僕はあえて反対の立場に立とうと思う。これを語ると長くなるので手短に言えば、神の雫の作者やロバート・パーカーは少なくとも人の耳目に自らのワイン観をさらして生きているのだ。主体的にワインと関わることのできる飲み手がいったいこの世に何人いるだろうか?

2009年3月11日水曜日

シェリーは別腹?

昨夜は、恵比寿3丁目のバル白金でF誌2月号に掲載されたシェリーをめぐる旅記事の打ち上げ。シェリー委員会のAさん、F誌編集担当のF君、カメラマンのK君と僕の4人で個室に陣取り、マンサニージャに始まって、フィノ、アモンティリャード、オロロソ、果てはアルマセニスタものやパロ・コルタード、ヴィンテージ・ソレラまで、甘口以外はリストの銘柄のほとんどすべてを頼み、タパスをあてに大いに飲んだ。F君を除く3人でヘレスの取材に行ったのは去年の9月。半年も前のことだ。取材したボデガの名前が出てくるたびに「ああ、行ったよね」とはなるのだが、なぜか話は取材時の回想にはならず、直近の話題ばかり。ペルーへ蒸留酒ピスコを飲みにいったというAさん、おとといスマトラから戻ったばかりのK君、中川前財務省のローマでの失態に一言あるF君と揃っては、もはやヴェネンシアもアルバリサ(あの地方独特の白い土壌)もタバンコ(樽からシェリーを注いで飲ませる飲み屋)もブレリア(ヘレスのフラメンコスタイル)も遠い話だ。ここ半月ほど、例の某女性誌用ワインリストにかかりきりで、白赤泡一辺倒にやや飲み疲れ気味だった僕にとってはシェリーの酒精強化の成分がカラダに新鮮且つ快かったようで、いつにも増しておいしく感じ、気のおけない連中と飲んでいるというシチュエーションが楽しいのも手伝って、飲んでも飲んでもまだイケる気がした。

上機嫌のまま家に帰り、飲みかけの赤を飲む。前夜はアルゼンチンのシラーに軍配を上げたが、1日経って、モンテプルチアーノが逆転。あれだけシェリーを飲んだ後なのに、しかも花粉症が出て嗅覚はゼロに等しいのに、グッと覚醒するような優美な味であった。現代的な造りに見えて、そこはやはりイタリアワインなのだなあ。

昼間、インポーターN社のSさんからのメールに「ピータンとエルミタージュの白を合わせたらおいしかった」と。ローヌのワインは中華と合うとは言うけれど、それはあくまでも南のほうのスパイシーな赤の話だったはず。ピータンと白とは!? ぜひとも近々に試してみなくては。